肌色

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「肌色」

著:ひさきさき 

■あらすじ
綾香は自分の娘であるが夏になっても半袖にならず、そのうえ手袋をつけていることがどうしても嫌だった。自我が芽生えた時から花白は露出することを異常に嫌がったが、女の子だから恥ずかしくなってきたのだろうと思い、放っておいたのが悪かったのだと嘆かない日はない。

 

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第一部

一章「母」

綾香は自分の娘であるが夏になっても半袖にならず、そのうえ手袋をつけていることがどうしても嫌だった。自我が芽生えた時から花白は露出することを異常に嫌がったが、女の子だから恥ずかしくなってきたのだろうと思い、放っておいたのが悪かったのだと嘆かない日はない。
あの時、無理にでも強制していたならばきっと、後悔しても遅いことは明白だと嘆き、周りの大人たちはもちろん自分の母にまでも蔑む様なめでなじられた綾香は心身ともに疲れていた。花白の父であり綾香の愛しい人が花白の異常のせいで呆気なく綾香を捨てた時、綾香は崩壊した。

綾香は高校時代から所謂キラキラ女子だった。彼氏も居た。友達と笑って毎日が充実していた。学歴を気にする親だから仕方なく大学に入って、大学から出て直ぐに結婚した。
綾香はこの人生を最高の勝ち組だと感じていた。例えるなら好きな食べ物と嫌いな食べ物が入っている料理を好きな物だけ最初に食べて、嫌いな食べ物になる前に何かが起こって回避することができる。そんな人生を歩んでいけていたのだ。
社会に出て変な人間関係を意識して変なことで妬まれて怒られてなじられて、なんて社会のつらさを感じることもなく、これからよっぽどのことがなければ一生働かなくても良いような収入の旦那がいるのだから、綾香はこれ以上はないと思っていた。

それが、綾香にしてみればたった一つの間違いですべて崩れ去ってしまったのだ。

 

 

第二章「娘」

お母さんが倒れた。

4時間目の国語の時間に走って来た事務の先生からそう言われた時、どうして放送で呼び出して伝えるんじゃないんだろうと思った。授業が中断するのがわたしのせいだと思うと声が出なかった。体が震えた。
そんなわたしを担任がほっとしたように見て、お母さんがわたしと会えるような状態ではないという事を言葉で濁しながら易しく説明した。わたしはそれを静かに受け入れた。担任はわたしに荷物を持ってくるように促した。

授業を中断させてしまったという思いに震えながら国語の授業をしている教室にそっと入るとみんながこっちを見た。ああ、いやだ。こっちを振り向いてほしくなかった。
そっと薄手の手袋を撫でて、俯きながら自分の席に立つ。空っぽのランドセルにペンケースと教科書とノートを詰め込んだ。夏休み明けだから全部の荷物をランドセルに簡単に詰め込むことができた。花白ちゃん、という授業中だから小声で

わたしを引きとめる声がしたけど振り返らなかった。お父さんが迎えに来るんだから早くしないといけなかったし、きっともう二度と会うことはないから。異常が居なくなった教室はきっといつもより楽しいだろうから、わたしの存在というものはとことん社会に不必要だ。

お父さんが迎えに来てくれた。お母さんは入院しているそうだ。でも、明日には退院だとお父さんはベンツを走らせながら言っていた。

成功者の証しだと言わんばかりにベンツを乗るお父さんに入院しているお母さんは一体どう映っているのだろうか。

お父さんの目に、わたしは一体どう映っているのだろうか。

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