ブランコに揺られて


「ブランコに揺られて」

著:もなみ。 

■あらすじ

ウチの女子高のイケメン教師は、実はお姉ちゃんの恋人。
ブランコに揺られながら、この気持ちも揺れ動いているんだ。

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ブランコに揺られて時間を経つのをひたすら待ち続ける。
そんな日常。

クラスの視線が痛い、と感じるようになったのはつい最近のこと。
噂はどこから広がったのか。そんなウソの噂なんて信じる方がどうかしてる。

***

片桐先生はとても優しい女子高の新任教師。高身長でイケメンなので女子生徒の憧れだ。
そんな女子の嫉妬をかってしまったのがそもそもの原因。

「片桐先生、これお姉ちゃんから」
こういうことは今回限りにしてほしい。よりによって、今日使う資料をお姉ちゃんの部屋に忘れていくなんて。
他の生徒が知ったら、半分以上の女子がショックで寝込んでしまうだろう。
先生には恋人がいる。その恋人が厄介なことに私のお姉ちゃんなのだ。
女子生徒よ、これが現実だ。

「ありがとう」
片桐先生はお姉ちゃんのことを思い出したのか、いつもより柔らかい笑顔で笑った。
こんな笑顔を向けられたら誰でもイチコロな気がする。

しかし、この時誰かに見られているなんて予想もしてなかった。
その時から、私への嫌がらせが始まったのだ。

教室に戻ると、クラスの女子が私を見てはひそひそ話をする。
勘違いなのではと思っていたが、明らかにこちらを見て笑っている。その笑いは楽しいものではなく、恨みそのものだ。女子特有の妬み。それは想像を超えるほど恐ろしい。
ついには、上級生に呼び出しをくらい、教科書を隠され、上履きに画鋲。
なんともまぁ、ありきたりなイジメである。

***

しかし、勘違いでここまでしてしまうあたりがおかしすぎて、学校へ行くのもアホらしくなった。
だからこうして、近所の公園でブランコに揺られている。
私は、なにも悪いことはしていない。ただ、運が悪かっただけなのだ。

しかし、このことを誰にも打ち明けられなかった理由は、他でもない。
私は、お姉ちゃんが昔から大好きだったからだ。お姉ちゃんの悲しむ顔は見たくなかった。毎日ここで考えることは、どうしたら教室に戻れるようになるか。それだけだった。
いつかはバレてしまうこの状況を回避する方法が何も浮かばないのだ。

ため息ばかり出る毎日。いっそ、この世界からいなくなってしまいたい。
現実からは逃げられない、この残酷な運命を呪うことしかできない自分が腹立たしい。

「あ、こんなとこにいた」
そんな声の主はすぐにわかった。片桐先生だ。うわ、なんでよりによって。
「最近、学校来てないんだって?担任の先生から聞いたよ」
「お姉ちゃんには内緒にしてください」
その言葉しか出てこなかった。
「理由を説明してください」
片桐先生はとても悲しそうな顔をした。そんな顔もきれいだった。

私は、この優しさが嫌いだ。
お姉ちゃんが嫌いになる、そんな優しさなのだ。
お姉ちゃんと一緒にいる片桐先生は嫌いだ。
ゆらゆらと揺れるブランコのように、私の気持ちは揺れている。

どうしてあんなに幸せそうな顔をするの?
どうして、私は妹なの…?高校生なの?

「私は先生が嫌いです」

その言葉にはどれだけの意味が込められていうと思う?
先生は、そんなこと知るはずもないでしょう?

「…ごめん」

苦しい、そんなふうに謝られると罪悪感がふつふつと煮え立ってくる。
私はお姉ちゃんが大好き…なハズなのに。

整理のつかない気持ちに、私はいつまで悩まされるんだろう。

さらに悲しそうな眼で私を見つめる片桐先生は、「わかっていたよ、」と、ただそれだけ。
それだけを私に伝えた。

片桐先生は鈍感ではない。
繊細で、人の気持ちを誰よりも感じ取っている人なのだ。
そんな人に、この叫びたくなるような気持ちを抑えきれていなかったことに、とても恥ずかしくなった。

―――――――この気持ちを知られていたんだ。

しかし反面、この誰にもわかってもらえない叫びがちょっとでも本人の伝わっていたことで、まぁいいか。と思えた。
私の中である意味解消できたのかもしれない。片桐先生に罪悪感を植え付けることで、自分の中での復讐ができたようだ。

ただ、それだけで十分だったのかもしれない。
わかっていてくれたんだ。

この気持ちは、少なからず無駄にはならなかったのだ。

この人は、いつまでたっても私の嫌いな人。

後日、片桐先生は交際を公にし結婚の意思も示した。そして、私の噂はあという間に消えて行った。
こんな風に、さらっとこなしてしまうあたりが、やはり大人だな、と感じさせる。

そういうところが、彼のズルいところである。

もうブランコに揺られなくてすむと思うと嬉しさの反面、寂しさも少なからずは感じた。
だけど、この気持ちは私の大切な大切な思い出。

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